【完全ガイド】大人のADHDと生きる:生活支援から訪問看護まで徹底解説

大人のADHDの方に贈る「公的サポート」

【大人のADHD】
あなたのその『生きづらさ』、努力不足ではありません

ADHDあるある
 

 皆さん、こんにちは。
 就労継続支援A型事業所ONE STEP利用者のヒラヤマです。

 今、この記事を読んでいるあなたは、きっと長い間、こんな「なぜ?」という疑問と戦ってきたのではないでしょうか。

「どうして、仕事のミスが減らないんだろう?」

「どうして、大事な約束をすぐに忘れてしまうんだろう?」

「どうして、部屋が常に片付かないんだろう?」

 もしかしたら、あなたは最近、「ADHD(注意欠如・多動症)」という言葉に出会い、長年の悩みの正体が『脳の特性』にあるかもしれないと気づき始めたばかりかもしれません。
 あなたは、決してサボっているわけではありません
 人一倍の熱意を持ち、何とかしたいと必死に頑張ってきたはずです。

 しかし、その頑張りが、社会の一般的なルールや環境と「うまく適合しない」という特性を持っているだけなのです。この頑張りたいのに、なぜかうまくいかない」という現実は、多くのエネルギーと自信を奪います

 もう、その悩みを「自己責任」や「だらしなさ」という言葉で片付けるのはやめましょう。
 自分を責め続けても、物事が進展することはありません。
 大人のADHDは、日常生活や社会生活における機能的なハンデと見なされ、その困難を補い、あなたが本来持つ力を発揮できるようにするための公的なサポートが、この国にはしっかりと用意されています
 それが、福祉サービスです。

 この記事では、あなたが次のステップに進むために、「どこに相談すればいいのか?」「どんな支援があるのか?」を分かりやすく解説します。

大人のADHDとは? 『特性』を理解する

ADHDの3タイプ
 

 まずは、あなたの抱える困難の背景にある特性を正しく理解することが、サポートを受けるための第一歩です。
 大人のADHDの主な特性は、「不注意」と「多動性・衝動性」の二つに分けられます
 「あ~、あるある」と耳が痛くなる方もいらっしゃると思いますが、ここは踏ん張りどころです(苦笑)。

不注意特性:集中力と実行機能の不安定さ

 これは、仕事や生活で「頑張っているのに、なぜか生産性が低い」と感じる原因です。
 あなたの日常に、こんな行動パターンはありませんか?

集中力のムラと持続の困難
  • 興味のない事務作業中、気づいたらまったく関係のないウェブサイトを数時間見てしまっている
  • 重要な会議や講義で、話を聞いている途中で意識が飛び、内容が分からなくなっている
  • 単純な計算ミスや誤字脱字といったケアレスミスが多い。
整理整頓と物忘れの困難
  • 鍵、財布、スマホといった必需品を毎朝探すことから一日が始まる
  • 「あとでやろう」と置いた書類や郵便物が山積みになり、必要なものが発掘できなくなる
  • 電気代やクレジットカードの支払いをうっかり忘れてしまう。
計画性と段取りの難しさ
  • 仕事の優先順位がつけられず、簡単なタスクばかり手をつけてしまう
  • 「今日やるべきこと」のリストを前にして、どこから手をつけていいか分からず固まってしまう
  • ゴールから逆算して準備することが苦手なため、旅行や出張の準備がいつも直前になる

多動性・衝動性特性:内面と行動の制御の難しさ

 これは、対人関係や金銭管理に影響を及ぼし、「後悔」を生みやすい原因です。

内的な落ち着きのなさ
  • 会議や電車の中で、体が動かなくても頭の中は常に考え事や不安でフル回転している
  • 貧乏ゆすりや髪の毛を触るなど、些細な体の動きが止まらない
  • 退屈な待ち時間が苦痛で、すぐに別の行動をとってしまいたくなる
衝動的な言動
  • 深く考えずに発言し、「余計な一言」で人間関係をこじらせてしまう
  • 「これだ!」と思ったら次の日に衝動的に高額な買い物をしてしまう(衝動買い)
  • カッとなった勢いで衝動的に仕事を辞めてしまうなど、後で後悔する大きな決断をしてしまいがち

 これらの特性が、あなたが今、仕事や生活で感じている「つまずき」の正体です。
 これらは努力で解決するものではなく、仕組みとサポートで補うべき特性なのです。

最初の一歩:どこに相談に行けばいいのか?

ADHDの診断基準
 

 「自分の悩みは、ADHDが原因なのかもしれない」

 「公的なサポートを受けてみたい」

 そう思ったら、まずは専門家につながることが重要です。
 「こうかもしれない、ああかもしれない」と考えている時間ほど、無為な時間はありません。
 悩んでいることで消耗してしまう労力を減らすという意味合いでも、早いうちに勇気を振り絞って、専門家の手を借りることをオススメします。

1. 医療機関:診断と治療を受ける

 ADHDの診断と適切な治療(薬物療法や認知行動療法など)を受ける場所です。

受診先 精神科、心療内科、または発達障害専門のクリニック。
検索のヒント「 発達障害 成人 診断」「大人のADHD 専門」などで検索し、初診予約をしましょう。
 初診まで時間がかかることが多いため、早めの予約がおすすめです。

2. 公的な相談窓口:福祉サービスにつながる

 診断がなくても、生活の困難について相談できる窓口です。
 ここでの相談が、福祉サービス利用への第一歩になることが多いです。

発達障害者支援センター 発達障害に関する専門的な相談支援を受けられます。
 診断の有無に関わらず利用でき、地域の福祉サービスや医療機関の情報を提供してくれます。
精神保健福祉センター より広範な精神的な健康問題についての相談窓口です。

 不安な場合は、まず最寄りの市区町村役場の障害福祉窓口に電話で「発達障害の特性による生活の困難について相談したい」と問い合わせてみるのが最も簡単な最初の一歩です。

知っておくべき公的なサポート(福祉サービス)の全体像

ADHDの人への合理的配慮
 

 専門家とつながることで、あなたの抱える困難に応じて、様々な福祉制度が適用される可能性があります。

仕事とキャリアを支える支援(就労支援)

 仕事の不安定さやミスに悩むあなたのために、働くことをサポートするサービスがあります。
 政府からも事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」義務化が推奨されています。
 働くうえでのサポートは、決してあなたのワガママではありません。

1. 就労移行支援事業所:仕事の準備期間

 一般企業への就職を目指す方が、仕事に必要なスキルや知識を学ぶための施設です。
 ビジネスマナー、PCスキルだけでなく、ADHDの特性に合わせた自己管理の方法や、職場で役立つコミュニケーションスキルなど、生活支援の側面も含めたトレーニングを受けられます。
 いきなり本番の職場に入る不安を解消できます。

2. 障害者雇用と合理的配慮

精神障害者保健福祉手帳』を取得することで、障害者雇用枠での就職を検討できるようになります。 企業に対してあなたの特性を考慮した合理的配慮を求めることができます。

【具体例】

  • 静かな作業スペースの確保
  • タスクを視覚化して、指示を出す

 これは、あなたが他の人と同じ土俵で能力を発揮するための自立支援につながります。

日常生活を安定させる支援(生活支援)

 仕事だけでなく、日常生活の「当たり前」が難しいあなたを支えます。
 世間で「当たり前」と言われていることほど、他人に打ち明けにくいものです。
 そのストレスを解消することは、QOLにも大きく影響してくることでしょう。

1. 精神障害者保健福祉手帳の取得

  手帳を持つことで、税金の控除、公共交通機関や携帯電話料金の割引など、生活をサポートする様々な優遇措置を利用できるようになります。
 これは、福祉制度を利用するための大切な「パスポート」となります。

2. 居宅介護(家事援助など)

 日常生活の家事(掃除、洗濯、料理など)が特性によって困難な場合に、ヘルパーによる生活支援を受けられます。
 「家事ができない」というストレスから解放され、その分のエネルギーを仕事や休息に充てることができます。

訪問看護:自宅で受けられる『パーソナルサポート』

精神的訪問看護
 

 特に、生活がなかなか安定しない方や、病院の診察時間だけでは相談しきれない細かな悩みがある方に、訪問看護は非常に有効です。
 訪問看護は、身体の病気だけでなく、精神疾患や発達障害を持つ方への精神科訪問看護として、自宅に専門家が訪問し、あなたの生活を支える介護・看護サービスです。

訪問看護でできること

 訪問看護師は、あなたの自宅という最もリラックスできる場所で、あなたの特性を理解したサポートを提供します。

生活リズムの安定 起床、就寝、食事などの生活リズムを一緒に見直し、安定させるための具体的なアドバイスやサポートをしてくれます。
服薬管理のサポート 薬の飲み忘れを防ぐための確認や、体調変化のチェックを行い、主治医と連携を取ることで、あなたが安心して治療を継続できるようサポートします。
特性に合わせた具体的な工夫 片付けの方法、期限管理の仕組み、衝動買いを防ぐための行動パターンなど、あなたの生活に合わせた具体的な生活支援策を一緒に考えてくれます。

勇気を出して、一歩踏み出しましょう

ADHDの人が負のサイクルを突破するために
 

「私って本当にADHDなのかな?」

「福祉サービスなんて大袈裟じゃないかな?」

 そう迷う気持ちは、とてもよく分かります。(ヒラヤマ自身、精神科を初めて受診するまでは、相当な葛藤があったことを今でも覚えています)
 しかし、あなたが抱えている困難は、適切なサポートによって必ず軽減できます。
 「頑張っているのに報われない」という負のループから抜け出すために、公的なサポートという『賢い道具』を使う権利を、どうか放棄しないでください

段階行動具体的な目的と効果
努力の棚卸し「頑張り」を書き出す費やしている時間、労力、感情、達成したこと、報われなかった結果を全てリストアップする。
負のループの特定構造的な問題を言語化「頑張り方(手段)が間違っているのか」、「目標設定が間違っているのか」、「環境が根本的に合っていないのか」など、ループを維持している真の要因を特定する。
課題の「外部化」自己責任から切り離す報われないのは「努力が足りない」のではなく、「現在のリソース(時間・スキル・環境)と課題の間にギャップがある」せいだと捉え、自分の性格や能力のせいにするのをやめる。
必要な「リソース」定義足りないものを明確にするステップ1で特定した課題を解決するために、「知識」「資金」「専門家のアドバイス」「時間」「環境」のうち何が最も必要か決める。
公的サポートの検索「道具」をリストアップハローワーク、自治体の相談窓口、職業訓練、補助金、障害福祉サービス、生活保護、公的なカウンセリングなど、④を満たす可能性のある公的な「賢い道具」を調べる。
窓口への相談と選択専門家を活用する候補を絞り、自治体や専門機関の窓口に連絡し、現状と課題を伝える。専門家の視点(第三者の目)を通じて、どのサポートが最も効果的かを選択する。
「道具」を導入する支援の実行職業訓練やカウンセリングの受講、補助金の活用、訪問看護の利用など、選択した公的サポートを躊躇せず開始する。
パターンを意図的に変える非効率な頑張りの中止「根性論」「気合い」といった非効率な頑張り方を意識的にやめる。代わりに、支援で得られた新しい知識や方法論に従って行動する。
新しい報われ方を定義自己評価の再構築大きな成果だけでなく、「支援機関に連絡できた」「新しいやり方を試せた」など、小さな一歩を「報われた」と正しく評価し直すことで、新しい正のサイクルを生み出す。


 まずは、勇気を出して、地域の発達障害者支援センターや、お住まいの役所の障害福祉窓口に電話で問い合わせてみましょう。
 これが、あなたが自分らしく、もっと楽に生きていくための、確かな自立支援の第一歩になるはずです。

参考書籍

マンガでわかる大人のADHDコントロールガイド

タイトルマンガでわかる大人のADHDコントロールガイド
概要 忘れっぽい、集中力が続かない、意欲がない、落ちつきがない、衝動的…、ADHDやADHDの特徴に悩む人は大勢います。本書はADHDの特性を持つ人のために、生活をコントロールして、トラブルを回避するための実践的なコツ、アドバイスを、豊富な臨床経験を持つ医師による解説と豊富なマンガで紹介します。日米の医療機関での研究や、実際のADHD患者が行って効果のあった取り組みから、考え方やヒントが得られます。・マンガだから読みやすく、わかりやすい!厚い本を読むのは苦手…という人でも気軽に読むことができます。・ケーススタディから学べる!ADHDは人それぞれ。豊富な事例から自分なりのコントロール法を見出せます。
評価☆4.2(335個の評価)
お客様のご意見 分かりやすさについては非常に高く評価されており、マンガと文章の組み合わせで内容が理解しやすく、具体的に事例や対処法が説明されているため、視覚的に理解しやすいと好評です。
 内容面では、実際的な内容で、具体例や対処法がわかりやすく、腑に落ちて前向きになれるという声が多くあります。
 また、共感できる箇所や参考になる箇所も多くあり、自分の経験と重なる部分も数多くあるようです。
漫画の画風についても、クセのないシンプルな画風で読みやすいと評価されています。

「大人のADHD」のための段取り力 (健康ライブラリースペシャル)

タイトル「大人のADHD」のための段取り力 (健康ライブラリースペシャル)
概要 ADHDの人が仕事や家事でうまくいかないのは、目の前のことしか見ていないから。
 場当たり的にする作業には連続性がありません。
 仕事や家事をスムーズに進めるにはどうしたらよいか。
 本書ではADHDの人が苦手とする「時間の管理」「ものの管理」「プランニング」「記憶の補強」「持続力」を5つの課題として、職場と家庭での具体的な取り組み方をイラスト図解。
 自分を励ましながら確かな段取り力を身につけましょう!
評価☆4.0(168個の評価)
お客様のご意見 この書籍について、実生活を整えるには有効だと評価しています。
 具体的なアドバイスやできそうな対策がイメージできると好評です。
 また、薄くて手軽に読め、イラストも多くすぐ読めるという声があります。また、共感・理解しやすい構成で、視覚的にも理解しやすく、共感・理解しやすいという意見もあります。

すごいADHD特性の使い方 人生が本当にラクになるコツ

タイトルすごいADHD特性の使い方 人生が本当にラクになるコツ
概要 「隠された才能」を200%活かしきる!
 変人か?  天才か?
 「失くし物」に「うっかりミス」。失敗続き、診断済みの僕がクセ強凸凹特性と向き合い続けて見つけた、リアルすぎるライフハック集。
 すごい不注意、すごい発想力、すごい行動力にすごい協調性のなさ……。
 ADHDの「すごい」特性と共に生きるための一冊。
 Xフォロワー数50万人超え。
 ADHD診断済みの著者が経験する経験は強い共感性を集め、1200万PV超の大人気投稿も生み出した。
 著者がたどりついた「リアル」で「共感性抜群」のADHD対策術とは…?
評価☆4.7(37個の評価)

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