サビ管への道が「迷路」すぎる!
「勘違い」をなくして、正しい情報を得よう!


「今の現場仕事は最高にやりがいがあるけれど、体力的には一生続けられないかも……。そろそろ『サービス管理責任者(通称:サビ管)』や『児童発達支援管理責任者(児発管)』を目指したい。けれど、一体いつになったらなれるの? そもそも、どんな試験を受ければいいの?」
サビ管(児発管)は、障害福祉・児童福祉のお仕事において極めて重要な役割を担う存在です。いわば現場の「司令塔」であり、利用者一人ひとりに最適な支援プラン(個別支援計画)を描くクリエイターでもあります。事業所には必ず配置しなければならない「要」の役職だからこそ、その分、資格取得へのハードルも高く設定されています。
ネットで調べても「実務経験5年」と書いてあったり、「いや、改正で8年になった」という噂が流れていたり、情報がカオス(混乱)状態ですよね。
実は、児童福祉分野の専門職である「児童発達支援管理責任者(通称:児発管)」も、サビ管と研修内容が共通化されているため、全く同じ悩みを抱えています。
この記事では、サビ管・児発管どちらを目指す方にも役立つ情報を整理していきます。
1. 根本的な勘違い:サビ管(児発管)に「筆記試験」はない?

まず、最も基本的で、かつ最も多くの真面目な方々が驚く事実からお伝えしましょう。
【勘違い①】「参考書を買って猛勉強し、試験に合格すればなれる」
サビ管(児発管)は、行政書士や社会福祉士のように「試験日に会場へ行き、マークシートで合格点を取れば資格がもらえる」という性質のものではありません。
サビ管(児発管)は、一定の実務経験を積んだ人が、自治体が実施する数日間の講義と演習(研修)をすべて受け終えることで認められる「研修修了資格」なのです。
つまり、どれだけ暗記力に自信があっても、現場での「泥臭い経験年数」が1日でも足りなければ、土俵にすら上がれません。
逆に言えば、当日の体調不良で頭が真っ白になって不合格……という悲劇も基本的にはありません。求められるのは「学力」ではなく、数年単位の「忍耐力」と「出席率」、そして現場での実践経験なのです。
2. 専門用語を整理しよう:これを知らないと計画が立てられない

サビ管を目指す上で避けて通れない「専門用語」。
ここを曖昧にしていると、役所の窓口で「要件を満たしていません」と門前払いされる原因になります。
① 直接支援業務
施設や事業所で、利用者さんに対して直接的な介護や支援を行うことを指します。
具体的には、入浴、排せつ、食事の介助といった身体介護や、調理、洗濯、掃除などの家事援助、さらには外出時の移動支援などが含まれます。
② 相談支援業務
利用者さんやその家族の相談に乗り、適切な福祉サービスにつなげたり、生活の困りごとを解決するためのアドバイスを行ったりする業務です。
相談支援事業所だけでなく、施設内での「相談員」としてのキャリアもここにカウントされる場合があります。
③ 基礎研修
サビ管(児発管)になるための第一段階の研修。
これを修了すると、後述する「実践研修」を受けるためのチケット(OJT期間への挑戦権)が手に入ります。
※2019年以降、サビ管と児発管の研修内容は共通化されました。
④ 実践研修
最終段階の研修。基礎研修を終えた後、一定の現場経験(OJT)を積んだ人だけが受講できます。これを修了して初めて、あなたは「正式なサビ管(児発管)」として登録されます。。
3. 第一関門:【実務経験】の壁|3年・5年・8年の正体

サビ管(児発管)への道は、まず自分の「修行期間」を数えることから始まります。
ここで多くの人が「自分はもう10年働いているから余裕!」と勘違いし、数年を無駄にしてしまうのです。
【勘違い②】「福祉業界に長くいれば、誰でも5年でOK」
サビ管・児発管の実務経験は、あなたの「職種」と「保有資格」によって、3年・5年・8年と残酷なまでに分けられています。
仮に「現場一筋10年!」と胸を張っても、持っている資格や業務内容によって、カウントのされ方が変わるのです。
特に注意が必要なのが、サビ管を目指すのか、児発管を目指すのかで「カウントできる業務内容」が違うという点です。
① サービス管理責任者(サビ管)を目指す場合
主に「大人の障害福祉サービス」を支えるリーダーを目指すルートです。
高齢者介護(介護保険制度)の経験も、多くの場合カウントに含まれます。
| 対象となる経歴・資格 | 必要な実務経験 | 主な具体例 |
| 特定の国家資格による業務 | 3年以上 | 医師、看護師、理学療法士、作業療法士など |
| 相談支援業務 | 5年以上 | 相談支援事業所、地域包括支援センターなど |
| 直接支援 (国家資格あり) | 5年以上 | 介護福祉士、保育士、社会福祉士等を持って支援に従事 |
| 直接支援(無資格) | 8年以上 | 資格はないが、現場の支援員として勤務 |
サビ管の場合、高齢者福祉(特養やデイサービス等)での経験も実務経験として認められるのが大きな特徴です。
介護業界からのキャリアチェンジ組が目指しやすいルートと言えます。
② 児童発達支援管理責任者(児発管)を目指す場合
主に「療育・放課後等デイサービス」など、子どもの支援のリーダーを目指すルートです。サビ管よりも「分野の専門性」が厳しく問われます。
| 対象となる経歴・資格 | 必要な実務経験 | 【超重要】必須条件 |
| 特定の国家資格による業務 | 3年以上 | 全期間が「児童・障害分野」であること |
| 相談支援業務 | 5年以上 | うち3年以上は「児童・障害分野」であること |
| 直接支援 (国家資格あり) | 5年以上 | うち3年以上は「児童・障害分野」であること |
| 直接支援(無資格) | 8年以上 | うち3年以上は「児童・障害分野」であること |
児発管を目指す方への注意点: 児発管になるには、総務省が定める実務経験(5年や8年)のうち、少なくとも「3年以上」は児童または障害者に対する支援に携わっていなければなりません。 「高齢者介護の経験が10年あるけれど、児童・障害の経験はゼロ」という方は、現時点では児発管の要件を満たせないため、注意が必要です。
結論:まずは「職歴証明書」の数え直しから
「自分はどっちのボックスに該当するのか?」を知るためには、過去の職場から「職歴証明書」を引っ張り出し、どの期間、どの職種で、どの対象者(大人か子どもか)」を支援していたのかを、パズルのように組み合わせて数え直す必要があります。
【勘違い③】「送迎ドライバーや調理員、事務職の期間も含まれる」

「俺、この施設で10年ドライバー兼雑用をやって、利用者さんとも仲良しだから実務経験 10年でしょ?」
……残念ながら、NOです。
実務経験として認められるのは、あくまで「直接支援」または「相談支援」に従事した日数(原則として年間180日以上など)です。
利用者さんのケアに直接携わっていない事務職や運転手としての専従期間は、どれだけ長く勤務していても「ゼロ」として扱われる冷徹な世界なのです。
4. 第二関門:【研修制度】の二段階構造|2019年改正の衝撃


実務経験さえ満たせば明日からサビ管!
……となれば楽なのですが、2019年の制度改正が私たちの前に立ちはだかります。
かつては1回の研修で済んだものが、今は「基礎研修」と「実践研修」に分割され、その間に巨大な「空白期間」が設けられました。
【勘違い④】「基礎研修を修了すれば、明日からサビ管を名乗れる
基礎研修を終えただけでは、あなたはまだ「サビ管の卵(基礎研修修了者)」に過ぎません。
正式なサビ管として配置されるには、その後に「実践研修」を修了する必要があります。
基礎研修修了の段階では、あくまで「サビ管の補助」的な動きしかできず、事業所が報酬を得るための「正式なサビ管」としてはカウントされません。
【勘違い⑤】「基礎研修が終わったら、すぐに実践研修を受けられる」
ここが最も多くの受講者を絶望させるポイントです。
基礎研修と実践研修の間には、原則として「2年以上の実務経験(OJT)」が必要です。
基礎研修で学んだことを、2年間現場でしっかり実践しなさい、という「熟成期間」なのですが、現場からすれば「2年も待っていたら人が辞めてしまう!」というのが本音でしょう。
5. 【2023年最新改正】OJT期間「2年」を「6ヶ月」に短縮する裏技

「2年は長すぎる!」という現場の悲鳴があまりに大きかったためか、2023年に救済措置が取られました。これが「OJT期間の短縮特例」です。
しかし、これも「誰でもOK」というわけではないのが、この制度のいやらしいところです。
【勘違い⑥】「基礎研修を受けてから6ヶ月待てば、自動的に受講資格が得られる」
これこそが、今最も多い、そして最も危険な勘違いです。
基礎研修修了後、ただ現場で半年働けばいいわけではありません。
【超重要】OJT開始の届出が必要!
多くの自治体(特に沖縄県など)では、基礎研修修了後、短縮特例を適用してOJTを開始する旨を伝える「必要書類」を事前に提出しなければなりません。
「届出を出した日から6ヶ月」とカウントされるケースが多く、届出を忘れて半年働いても、その期間は「ノーカウント」にされる恐れがあるのです。
短縮特例を受けられる3条件
- 実力十分: 基礎研修受講時に、すでに実務経験(5年・8年等)を完了している。
- 実務経験: 個別支援計画作成の「一連の業務」に従事している。
- 届出: 自治体に「開始届」を提出し、受理されている。
6. 沖縄県における「独自ルール」:書類の壁と10回の試練

ここで、ヒラヤマが入社している就労継続支援A型事業所ONE STEPがある「沖縄県」の具体的なルールを見てみましょう。
沖縄県でサビ管を目指すなら、県の独自資料を読み解く必要があります。
実は、ここにも特有のハードルが存在します。
【勘違い⑦】「研修にさえ行けば、県が勝手に認めてくれる」
沖縄県で「OJT期間の短縮」を狙うなら、事業所を通じて「実務経験受講者等届出書」という書類を事前に県に提出しなければなりません。
沖縄県の資料には、非常に具体的な「一連の業務」の定義が示されています。
単に「手伝いました」では通用しません。
以下のプロセスを「合計10回以上」経験していることを、チェックリストと共に証明する必要があるのです。
- アセスメント: 利用者さんの状況やニーズを分析する
- 個別支援計画(案)の作成: 支援の具体的な目標を立てる
- 会議の開催: スタッフや関係者と計画を検討する
- 説明と交付: 利用者さん本人に説明し、同意を得る
- モニタリング: 計画通り進んでいるか、効果はあったかを確認する
つまり、「なんくるないさー(なんとかなるさ)」の精神は、サビ管の書類手続きには通用しません。
沖縄県庁の担当者が「この人は確かに実績がある」と納得するだけの証拠(書類)を揃えることが、期間短縮への唯一のルートです。
7. 現場の救世主?「みなし配置」というショートカット

「サビ管が急に辞めてしまった! 次の研修まで待てない!」という絶望的な状況の事業所のために、「みなし配置」という制度があります。
これは、実務経験(5年・8年など)を満たしている人であれば、研修を修了していなくても最大1年間は「サビ管とみなして配置して良い」という特例です。
ただし、これもあくまで「緊急事態」の措置。
その1年間のうちに基礎研修や実践研修をクリアしなければならず、本人にとっては「働きながら、怒涛の勢いで書類を出し、研修を受ける」という、過酷な1年になります。
8. 実践!サバイバル術:研修当日のグループワークを乗り切る

「試験がないなら楽勝」と思っている方に、あえてお伝えします。
サビ管研修の最大の難所は「グループワーク」です。
研修では、他施設のスタッフとチームを組み、架空の事例に対して「個別支援計画」を作成します。
ここで意見が対立したり、一人で抱え込んでしまったりすると、講師から「サビ管としての資質に欠ける」と判断される(=修了証がもらえない)可能性もゼロではありません。
- コツ①: 自分の施設のやり方に固執せず、他人の意見を「聴く」姿勢を見せる。
- コツ②: 専門用語(アセスメント、モニタリング等)を正しく使い、論理的に話す。
- コツ③: タイムキーパーや書記など、役割を積極的に買って出る。
9. シミュレーション:あなたがサビ管になるまでの「本当の期間」

「自分は最短でいつ、責任者になれるのか?」という疑問に答えるため、実務経験5年を満たしている有資格者が、2023年の改正(短縮特例)を利用した場合のシミュレーションを作成しました。
① サービス管理責任者(サビ管)を目指すケース
例:介護福祉士として高齢者介護施設で5年勤務した後、障害福祉分野へ転身する場合
| 期間 | アクション | 状態 |
| 1〜5年目 | 高齢者施設などで直接支援業務に従事 | 実務経験(5年)をクリア |
| 6年目(春) | 「基礎研修」を受講・修了 | サビ管の卵になる |
| 6年目(即日) | 「OJT開始届(短縮用)」を自治体に提出 | ここが運命の分かれ道! |
| 6年目(秋) | 個別支援計画作成の補助(OJT)を半年継続 | 短縮要件(6ヶ月)をクリア |
| 7年目(春) | 「実践研修」を受講・修了 | 短縮要件(6ヶ月)をクリア |
- 最短期間: 実務経験5年 + 約1年(研修期間含む)= 計6年前後
- ポイント: サビ管は高齢者介護の経験をそのまま活かせるため、異業種からの特急ルートが狙いやすいのが特徴です。
② 児童発達支援管理責任者(児発管)を目指すケース
例:保育士として保育園で2年、放課後等デイサービスで3年勤務した場合
| 時期 | アクション | 状態 |
| 1〜5年目 | 保育園(2年)+放デイ(3年)で勤務 | 実務経験(5年)+児童分野3年をクリア |
| 6年目(春) | 「基礎研修」を受講・修了 | 児発管の卵になる |
| 6年目(即日) | 「OJT開始届(短縮用)」を自治体に提出 | 出し忘れると半年ロス! |
| 6年目(秋) | 児発管の補助としてモニタリング等を実施 | 短縮要件(6ヶ月)をクリア |
| 7年目(春) | 「実践研修」を受講・修了 | 正式な児発管として登録! |
- 最短期間: 実務経験5年 + 約1年(研修期間含む)= 計6年前後
- ポイント: 児発管の場合、保育園のみの経験(5年)でも基礎研修は受けられますが、「実践研修」を受けるまでには、必ず障害児・者施設でのOJTが必要になります。
10. 最後に待ち構える「更新研修」という名の罠

ようやくサビ管になれた!……と、ここでハッピーエンドにしたいのですが、最後にもう一つだけ大きな勘違いを正しておかなければなりません。
【勘違い⑧】「一度研修を終えれば、一生サビ管でいられる」
サビ管は「運転免許」と同じです。
5年ごとに「更新研修」を受けなければ、その資格は効力を失います。
もし更新を忘れると、事業所の配置基準違反となり、施設全体の報酬が大幅にカットされます。
サビ管としてのキャリアは、取得してからが本当の戦いの始まりなのです。
サビ管になるメリット:苦労に見合う価値はあるのか?

ここまで読んで、「なんて面倒なんだ……。そこまでしてサビ管になる意味あるの?」と思った方もいるかもしれません。
しかし、その苦労に見合うメリットは確実にあります。
1. 収入のアップ
サビ管は事業所に必須の役職であり、責任も重いため、基本給に加えて「役職手当」や「資格手当」がつくのが一般的です。
月給で数万円、年収ベースでは数十万円のアップが見込めるケースも珍しくありません。
2. キャリアの安定性
一度サビ管の資格(実践研修修了)を手に入れれば、転職市場での価値は跳ね上がります。全国どこへ行っても仕事に困ることはないでしょう。
いわば「福祉業界の終身雇用チケット」を手に入れるようなものです。
3. 現場を俯瞰する視点
利用者さんと一対一で向き合う現場の仕事も素晴らしいですが、サビ管として「チーム全体でどう支えるか」をデザインする仕事は、また違った深いやりがいがあります。
自分の作った支援計画によって、利用者さんの生活が劇的に改善する瞬間は、サビ管冥利に尽きるものです。
サビ管への道は「正しい情報」という武器で決まる

サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者は、教科書の上で取る資格ではありません。現場の汗と、正しい制度理解の積み重ねの先にあります。
- 数える: 自分の実務経験を正確に算出する。
- 見極める: サビ管か児発管か、どのルートかを知る。
- 動く: 基礎研修が終わったら即、自治体に「開始届」を出す!
正しい地図を持てば、迷路は必ず抜けられます。
現場の司令塔として、あなたが新しい一歩を踏み出すことを心から応援しています。
この記事が、あなたのキャリアアップの「コンパス」になれば幸いです。

