- 2024年12月5日:投稿
もしかして私も? 発達障害のグレーゾーンの基礎知識
みなさん、こんにちは。
就労継続支援A型事業所ONE STEP利用者のヒラヤマです。
みなさんは「発達障害」という言葉を聞いたことがありますか?
令和4年12月13日に文部科学省から公表された調査によると、通常の学級に在籍する小中学生の8.8%に学習や行動に困難のある発達障害の可能性がある(35人学級であれば3人ほどの割合)と発表されるなど、決して珍しいものではありません。
また、その発達障害と類似しているものとして「グレーゾーン」というものがあります。
「グレーゾーン」とは、発達障害の特徴を少し持っているけれど、はっきりと「発達障害」と診断されない人たちのことを指します。
この記事では、グレーゾーンとは何か、その人たちがどんなことで困っているのか、どうすればみんなで助け合えるのかを、一緒に考えていきましょう!
- 発達障害って何?
- 発達障害のグレーゾーンとは?
- 発達障害の診断方法
- グレーゾーンの人が感じる困りごと
- 年齢別に見るグレーゾーンの特徴
- グレーゾーンの人をどうサポートすればいい?
- 発達障害による二次障害とは?
- 発達障害グレーゾーンへの小さな理解が大きな支えに
発達障害って何?
まずは、発達障害について簡単に説明します。
発達障害には、大きく分けて3つの種類があります。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)は、他の人とのコミュニケーションが苦手だったり、こだわりが強かったりする特徴があります。
たとえば、会話の途中で相手の気持ちが読み取れなかったり、同じ行動を繰り返したりします。
「ネガティブすぎるモデル」としてテレビや雑誌で活躍されている栗原類さん、シンガーソングライターの米津玄師さん、X(旧Twitter)を買収したイーロン・マスクさんが、ASDだとカミングアウトされています。
主な特徴
- 社会性の困難:対人関係が苦手、空気を読むのが難しい
- コミュニケーションの問題:会話が一方通行になる、言葉の使い方が独特
- 強いこだわり:特定の物事への強い興味、ルールや習慣への固執
- 感覚の過敏・鈍感:音や光、触感に敏感すぎる、または鈍感
注意欠陥・多動性障害(ADHD)
注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、集中力を保つのが難しかったり、じっとしていられなかったりします。
たとえば、授業中にすぐに別のことを考えてしまったり、忘れ物が多かったりします。
ご自身でADHDとカミングアウトされている有名人では、「メン・イン・ブラック」「アイ・アム・レジェンド」などに出演されているハリウッドスターの「ウィル=スミス」さん、深瀬慧(SEKAI NO OWARI)さんがいらっしゃいます。
主な特徴
- 不注意タイプ:集中力が続かない、忘れ物が多い、ケアレスミスが多い
- 多動性・衝動性タイプ:落ち着きがない、授業中に立ち歩く、考える前に行動してしまう
- 混合タイプ:不注意と多動性・衝動性の両方の特徴を持つ
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、読み書きや計算が苦手で、勉強に困難を感じることがあります。
たとえば、文字を覚えにくかったり、数字の計算がうまくできなかったりします。
『トップガン』『ミッション・インポッシブル』などに出演されたトム・クルーズさんが難読症を抱えながらもハリウッドスターとして大活躍されているのは有名ではないでしょうか。また、”女装家”として、バラエティ番組で活躍されているミッツ・マングローブさんは学習障害と告白されています。
主な種類
- 読字障害(ディスレクシア):文字を読むのが苦手、音読が遅い
- 書字障害(ディスグラフィア):文字を書くのが苦手、漢字を覚えられない
- 算数障害(ディスカリキュリア):計算や数字の概念が理解しにくい
発達障害のグレーゾーンとは?
「グレーゾーン」の人は、発達障害の診断を受けるほど特徴が強くないため、特別なサポートを受けられないことがあります。でも、日常生活で困ることが多いのです。
これらの人たちは、周りから「努力が足りない」と誤解されやすく、つらい思いをしてしまうことがあります。
具体的な例を見てみましょう。
事例 | 困りごと | 背景にある特徴 |
Aさん | 集団行動が苦手で友達とケンカになりやすい | ASD傾向で、相手の気持ちを読み取るのが難しい |
Bさん | 忘れ物が多く、宿題をよく忘れる | ADHDの不注意傾向がある |
Cさん | テストの問題が読みにくく、理解が遅い | 軽い読み書き障害(SLD傾向) |
Dさん | 体育の授業で音が大きいとパニックになる | 感覚過敏が強い |
発達障害の診断方法
発達障害を診断するには、専門的な検査や医師の判断が必要です。
診断の主なステップは次の通りです
① 問診(もんしん)
本人や家族から、困っていることや生活の様子を聞きます。
学校や家庭での行動を詳しく話すことが重要です。
② 行動観察
専門の先生や心理士が、本人の行動を観察します。
特に、友達との関わり方や集中力などがチェックされます。
③ 心理検査や知能検査
知能検査(IQテスト)や発達検査を行います。
これにより、得意なことや苦手なことを詳しく知ることができます。
④ 総合的な判断
問診や検査結果をもとに、医師が発達障害かどうかを診断します。
ただし、診断基準に満たない場合でも、困難があると「グレーゾーン」とされます。
グレーゾーンの人が感じる困りごと
グレーゾーンの人は、見た目や行動が普通に見えるため、周囲の人に困っていることが伝わりにくいのが特徴です。次のような悩みを持つことが多いです。
人間関係がうまくいかない
友達との会話がかみ合わなかったり、相手の気持ちがわからなかったりします。
勉強や宿題が苦手
頑張っているのに成果が出ないため、先生や親に「なぜできないの?」と言われてしまうことがあります。
自己肯定感が低い
自分を責めて「どうして自分はこんなにダメなんだろう」と感じることがあります。
感覚の違いが強い
音や光に対して過敏だったり、逆に鈍感だったりします。
例えば、大きな音が苦手で教室でのチャイムや体育館の音に強いストレスを感じることがあります。
スケジュール管理が苦手
宿題や提出物を忘れてしまったり、時間通りに行動するのが難しいことがあります。
でも、ADHDと診断されるほど頻繁ではありません。
集団行動が苦手
周りのペースに合わせることが難しく、団体行動がうまくいかないことがあります。
体育の授業やグループワークで、他の人との協力がうまくできないことがあります。
こだわりが強い
特定のことに強いこだわりがあり、気持ちを切り替えるのが苦手です。
例えば、いつもの席やルーチンが変わると、不安やパニックになってしまいます。
一度に複数のことをこなせない
同時に複数の指示を受けると混乱してしまうことがあります。
例えば、授業中に「ノートを開いて、次に教科書の何ページを見て」といった指示が理解しづらいことがあります。
年齢別に見るグレーゾーンの特徴
1. 幼児期(3〜6歳):小さな違和感に気づく時期
この時期のグレーゾーンの特徴は、発達の遅れや偏りが少し見られるものの、周囲と同じように成長しているように見えることがあります。
主な特徴
- 言葉の発達がゆっくり:会話が苦手、単語の繰り返しが多い
- 感覚過敏:大きな音や特定の触感を嫌がる
- 集団行動が苦手:一人遊びを好む、友達とのトラブルが多い
- こだわり行動:同じ遊びばかりを繰り返す
2. 小学生期(7〜12歳):学校生活での困りごと
小学校に入ると、学習や集団行動の中で困りごとが目立ちやすくなります。
主な特徴
- 授業中の集中力が続かない:先生の話を聞き逃しやすい
- 忘れ物が多い:宿題や持ち物を忘れることが頻繁
- 読み書きの苦手さ:漢字を覚えにくい、計算ミスが多い
- 対人関係のトラブル:友達と意見が合わずケンカになりやすい
具体例
- 国語の授業で音読が苦手(SLD傾向)
- 友達の気持ちが読めず、すぐに怒ってしまう(ASD傾向)
3. 中学生期(13〜15歳):複雑になる人間関係と自己管理
中学生になると、人間関係や学業が複雑になり、グレーゾーンの困りごとが増えることがあります。
主な特徴
- 集団行動が難しい:グループ活動で孤立しがち
- 時間管理が苦手:テスト勉強や提出物の計画が立てられない
- 感情のコントロールが難しい:些細なことでイライラする
- 興味の偏り:好きなことには集中するが、興味がないと全く取り組めない
具体例
- 友達から「空気が読めない」と言われることがある(ASD傾向)
- 提出物の締切を守れない(ADHD傾向)
4. 高校生〜大学生期(16〜22歳):進路や将来への不安
この時期は、進路や将来への不安が増えるため、ストレスを感じやすくなります。
主な特徴
- 計画性がない:進路や受験勉強で迷いやすい
- アルバイトでのトラブル:指示が曖昧だと混乱する
- 対人関係のストレス:友達関係で孤立することがある
- 強いこだわりや興味の偏り:特定の趣味や学問に没頭
具体例
- バイトで指示通りに動けず怒られることがある(ADHD傾向)
- グループワークで意見が合わず孤立する(ASD傾向)
5. 成人期(23歳以上):社会生活での見えにくい困難
大人になると、仕事や社会生活で困りごとが目立つことがあります。発達障害の診断が下りないまま、職場や家庭でストレスを抱えがちです。
主な特徴
- 仕事でのミスが多い:指示を正確に理解できない
- 時間管理が苦手:締切や約束を守れない
- 人間関係でのトラブル:同僚や上司とコミュニケーションがうまく取れない
- 感覚過敏:職場の騒音や明るい照明が苦手
具体例
- 上司の指示が曖昧だと混乱する(ASD傾向)
- ルーチンワークは得意だが、臨機応変な対応が苦手(ADHD傾向)
グレーゾーンの人をどうサポートすればいいの?
グレーゾーンの人を助けるためには、みんなの理解と協力が大切です。
1. 理解することが第一歩
まずは、グレーゾーンの人がいることを知り、「努力不足」や「性格の問題」と決めつけないことが大切です。困っていることを優しく聞いてあげましょう。
2. 相談しやすい環境を作る
学校の先生や友達が相談に乗り、困ったときにサポートできる環境があると安心です。
3. 自分の特性を知る
自分の得意なことや苦手なことを知ることで、どうすればうまく対処できるか考えやすくなります。
発達障害による二次障害とは?
二次障害とは、発達障害そのものが直接引き起こすものではなく、発達障害に伴う困難な状況や周囲の理解不足などが原因で引き起こされる心の問題や身体的な問題のことです。
発達障害が早期に理解・支援されないと、ストレスや孤立感が積み重なり、二次障害につながることがあります。
発達障害による主な二次障害
1. うつ病・抑うつ状態
発達障害の特性によって、学校や職場での失敗が重なったり、周囲から誤解されたりすると、自分に対する自信を失い、うつ病を発症することがあります。
- 症状:気分の落ち込み、無気力、不眠、自己否定感
2. 不安障害
人間関係のトラブルや予測不可能な状況が続くことで、強い不安感を抱くことがあります。
特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥・多動性障害)の人は、変化や予測不能な出来事に対して敏感です。
- 症状:過度な心配、パニック発作、強迫的な行動
3. 適応障害
環境の変化(学校の進級、職場の異動など)にうまく適応できず、ストレスが原因で心身に不調をきたすことがあります。
発達障害の特性が周囲に理解されないままだと、適応障害を引き起こしやすいです。
- 症状:頭痛や腹痛、無気力、対人関係の回避
4. 自己肯定感の低下
「頑張ってもできない」という経験が繰り返されることで、「自分はダメな人間だ」と感じるようになり、自己肯定感が低くなります。
自己肯定感が低下すると、挑戦する意欲を失ったり、対人関係を避けたりすることがあります。
- 影響:新しいことへの挑戦を避ける、失敗への過度な恐怖
5. 行動の問題化(反抗挑戦性障害や非行など)
理解されない苦しさから、反抗的な態度を取ったり、問題行動を起こすことがあります。
特に、ADHDの子どもは、自分の気持ちをうまく表現できずに反発することがあります。
- 例:授業中にわざと騒ぐ、ルールを無視する、攻撃的な態度を取る
二次障害を防ぐためにできること
1. 早期発見と適切な支援
発達障害の特性を早く理解し、必要な支援を受けることで、困りごとを軽減できます。特に学校や職場でのサポート体制が重要です。
2. 環境の調整
特性に合った環境を整えることで、ストレスを減らすことができます。
例:静かな学習スペースを確保する、タスクを細かく分ける
3. 周囲の理解を深める
家族や教師、同僚が発達障害について理解を深めることで、本人の負担が軽減されます。
4. カウンセリングや心理的サポート
専門家のサポートを受けることで、ストレスや不安を和らげることができます。
発達障害グレーゾーンへの小さな理解が大きな支えに
発達障害のグレーゾーンにいる人は、表面上はわかりにくくても、心の中でたくさんの困りごとを抱えています。
大切なのは、「みんな違って当たり前」という気持ちを持つこと。
そして、困っている人を見かけたら、理解し、助け合うことです。
私たち一人ひとりが理解を深め、優しさを持って接することで、誰もが安心して過ごせる学校や社会が作れるのではないでしょうか。
「ゆいまーる(沖縄の方言で助け合いを表す言葉、「相互扶助」を順番に平等に行う「助け合いの心」を意味)」を心がけていきましょう。
参考URL
- 発達障害の「グレーゾーン」って?特徴や仕事探しについても解説 │ LITALICO仕事ナビ
- 発達障害グレーゾーンの子どもとは │ LITALICOライフ 発達障害
- 発達障害のグレーゾーンとは?その特徴と向いている仕事について │ atGP
- 【専門家Q&A】発達障害のグレーゾーンって?特徴や相談先について解説します │ LITALICOジュニア
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