境界性パーソナリティ障害の『見捨てられ不安』とは


『たった数時間、返信が来ないだけなのに、こんなに苦しいのはおかしいのかな』

『また重いと思われたかもしれない。もう嫌われたかも』
そんなふうに、頭では『考えすぎかもしれない』と分かっているのに、気持ちがまったく止まらない夜ってありますよね。
スマホを見て、閉じて、また見てしまう。
あの感じ、つらいものです。
境界性パーソナリティ障害とは、感情、対人関係、自己イメージ、行動が不安定になりやすく、強い『見捨てられ不安』や気分の激しい揺れ、衝動的な行動がみられることがあるパーソナリティ障害の一つです。
相手のちょっとした態度の変化にも強く反応しやすく、人間関係の中で苦しさを抱えやすい特徴があります。

『なんでこんなに不安になるんだろう』
そう思って自分を責めてしまう人も多いはずです。
けれど、見捨てられ不安は、単純に『気にしすぎ』では片づけられない苦しさです。
この記事では、境界性パーソナリティ障害の人にみられやすい『見捨てられ不安』の特徴を整理しながら、感情の波に飲み込まれにくくするコツを、少し実感に寄せながらまとめていきます。
『見捨てられ不安』が強いと起こりやすいこと

境界性パーソナリティ障害では、返信の遅れ、そっけない返事、いつもと少し違う声の調子のような小さな変化を、『離れていくサインかもしれない』と受け取りやすいとされています。
周囲から見れば小さな出来事でも、本人の中ではかなり大きな恐怖にふくらみやすいのです。
たとえば、こんな反応が起こることがあります。
- 何度も連絡したくなる。
- 急に怒りがこみ上げる。
- 泣いてしまう。
- 関係を終わらせるような言葉を先にぶつけてしまうことがある。
- 落ち着いた後に強い自己嫌悪に沈みやすい。

『こんなことしたかったわけじゃないのに』
たぶん、そこがいちばん苦しいんですよね。
感情が噴き出している最中は止められないのに、あとから冷静になって、自分の言動だけがくっきり残る。あれはきついです。
境界性パーソナリティ障害の特徴として、対人関係の不安定さ、自己像の揺らぎ、感情の不安定さ、衝動性などが挙げられています。
自分が何者なのか分からなくなるような揺らぎがあるぶん、身近な人の反応が、自分の価値そのものを決めるように感じられやすいのかもしれません。
『見捨てられ不安』が強くなる背景

見捨てられ不安の背景には、幼少期の愛着の不安定さ、過去のつらい人間関係、自己肯定感の低さなど、さまざまな要因が複雑に関係していると紹介されています。
見捨てられ不安とは、大切な人に嫌われたり見放されたりすることに対して、過剰な恐怖や不安を感じる心の状態だと説明されています。
つまり、不安の出発点は『今この瞬間の相手の態度』だけではないことがあります。
過去の傷ついた経験や、『自分には価値がないのでは』という思い込みが重なると、現実の出来事が必要以上に大きく見えてしまうからです。
ここ、少しやっかいです。

『相手が悪いのか、自分が考えすぎなのか、もう分からない』
そんなふうに混乱してしまうこともあるはずです。
境界性パーソナリティ障害では見捨てられ不安が代表的な症状の一つとして扱われており、感情や行動の不安定さと深く関係していると紹介されています。
だから、『こんなに苦しいのは自分が弱いからだ』と決めつけないことが大切です。
ヒラヤマはここ、かなり大事だと思っています。
つらさには、つらさなりの理由がある。
まずはそこを否定しないほうがいい。
そう感じます。
感情の波に飲み込まれにくくする

見捨てられ不安とうまく付き合うコツは、不安を完全になくすことではなく、波が高くなったときの反応を少しずつ整えることです。
いきなり別人みたいに落ち着こうとしなくて大丈夫です。
正直、そんなふうに急には変われません。
不安を頭の中だけで育てない
不安な気持ちを紙に書き出して客観視する方法が紹介されています。
『返信が来ない』『嫌われた気がする』『胸が苦しい』のように、起きたことと自分の反応を書き出すと、感情の渦から少し距離を取りやすくなります。
書き出すときは、こんな形で十分です。
- 何があったか
- そのとき何を思ったか
- 体にどんな反応が出たか
- 事実として分かっていることは何か

『こんなの書いて意味あるのかな』
そう感じるかもしれません。
でも、頭の中だけで不安を回し続けるより、紙の上に出したほうが少しだけ冷静になれることがあります。
不安を感じる自分を否定しない
見捨てられ不安への対処として、不安を感じる自分を否定せず受け入れることも挙げられています。
『またこんなことで苦しくなっている』『自分はだめだ』と責めるほど、不安はさらに大きくなりやすいからです。
意識したいのは、次のような言い換えです。
- 『またダメだ』ではなく『今は不安が強く出ている』
- 『おかしい』ではなく『苦しい状態にある』
- 『すぐ消さなきゃ』ではなく『まず気づこう』
感情をなくそうとするより、まず名前をつける。
そのほうが、少し落ち着きやすい。
ヒラヤマはそう思いますし、紹介されている対処法とも重なります。
小さな成功体験を積み重ねる
見捨てられ不安には、小さな成功体験で自己肯定感を育てることも大切だとされています。
大きく変わる必要はありません。
むしろ、小さくていいんです。
たとえば、こんなことです。
- 連絡を連投せずに10分待てた。
- 気持ちを書き出せた。
- 不安な自分を責めずにいられた。
- その場で別れ話を切り出さずにすんだ。

『こんな小さなことで意味があるのかな』
あります。
少し待てた、少し踏みとどまれた、その積み重ねが『自分にもできることがある』という感覚につながっていくからです。
相手との距離感を学ぶ
見捨てられ不安が強いと、相手の機嫌や態度を必要以上に自分の問題として抱え込みやすくなります。
そこで、相手との健全な距離感を学ぶことも対処法の一つとして紹介されています。
自分に言い聞かせたいのは、こんなことです。
- 相手には相手の生活がある。
- 返事の速さだけで愛情は決まらない。
- 相手の機嫌のすべてを自分が背負う必要はない。
- 自分にコントロールできないこともある。
もちろん、分かっていても難しい。
『そんなふうに切り替えられたら苦労しない』と思う日もあるでしょう。
それでも、『これは事実なのか、不安が作った解釈なのか』と一度問い直すだけで、反応の強さが少し変わることがあります。
一人の時間を整える
一人で過ごす時間を充実させることも、見捨てられ不安の軽減につながる方法として挙げられています。
誰かがそばにいないと落ち着かない状態が続くと、相手に依存しやすくなり、人間関係も不安もになりやすいからです。
たとえば、こんな時間の使い方があります。
- 散歩する
- 音楽を聴く
- ノートに気持ちを書く
- ひとまずスマホから離れる
- 休む時間を決める
『一人でいる=見捨てられた』ではありません。
この感覚を、少しずつ育てたいところです。
すぐには難しくても、その方向に向かうだけで意味があります。
つらさが強いときは専門家を頼る

境界性パーソナリティ障害では、感情の不安定さや衝動性が強くなり、自傷行為や自殺企図につながることもあると説明されています。
学校や仕事、人間関係に支障が出ているとき、自分だけで抱え込み続けるのはかなり危うい状態です。
相談を考えたいサインは、次のようなものです。
- 不安が強すぎて日常生活に支障が出ている。
- 人間関係のトラブルを繰り返している。
- 感情の波が大きく、自分で抑えにくい。
- 自分を傷つけたい気持ちがある。
治療については、精神療法が重要とされ、弁証法的行動療法、スキーマ療法、メンタライゼーションなどが紹介されています。
実際、適切な治療によって改善が期待でき、治療開始から約2年で40%ほど、6年後には80%にのぼるケースで症状が寛解した研究報告があるとされています。
ここは、少し安心していいところです。
ずっとこのままかもしれない。そう思う日もあるかもしれません。
けれど、改善の可能性が示されている以上、『もう無理だ』と決めつけなくていいのです。
ただ、診断は専門家が行うものであり、気になる症状がある場合は精神科や心療内科への相談が勧められています。
『こんなことで受診していいのかな』と迷うときこそ、相談のタイミングかもしれません。
今日の自分を責めるより、まずは『今つらいんだな』と認めること。
そこからで十分です。
感情の波に飲み込まれないための一歩は、案外、その小さな認め方から始まるのだと思います。

