それは性格ではなく、不安のサインかもしれません

朝から、もう、少し疲れています。
まだ何も起きていないのに、頭のどこかが落ち着かない。
仕事のこと、家族のこと、自分の体調、将来のお金のことまで、気になることが次々に浮かんできます。
考えすぎだと分かっているのに、止まらない。
気にしすぎる性格なんだろう。
そうやって、自分で自分を片づけてきた人は少なくありません。
けれど、その不安が長く続き、眠りや集中力、日常生活のしんどさにまでつながっているなら、ただの心配性ではなく、全般性不安障害、いわゆるGADが関係しているかもしれません。
全般性不安障害は、日常生活のさまざまな出来事に対して、漠然とした不安や心配が慢性的に続く状態で、不安の対象は仕事、家庭、健康、学校、家計、近所づきあい、災害などへ広がりやすいと説明されています。
そのつらさ、性格の問題だと思い込んでいませんか

ちゃんとしている人ほど見逃しやすい
このテーマがやっかいなのは、不安の中身だけを見ると、どれも日常によくある心配に見えることです。
- 仕事の失敗が気になる。
- 家族の体調が気になる。
- 将来に備えて不安になる。
どれも、それ自体はおかしなことではありません。
そのため、本人も周囲も『少し神経質なだけ』『真面目だから気になるだけ』と受け止めやすく、患者自身も性格の問題だと思い込みやすいとされています。
ここで苦しいのは、不安があることそのものではありません。
不安が終わらないことです。
ひとつ気がかりが薄れたと思っても、次の不安がすぐに頭の中へ入ってくる。
安心したいのに、安心が長続きしない。
その積み重ねで、毎日の元気が少しずつ削られていきます。
こういう心の声が増えていませんか
- これくらい、みんな我慢しているのかもしれない。
- 病院に行くほどではない気がする。
- ちゃんとしていれば平気なはずだ。
- こんなことで疲れる自分が弱いのかもしれない。
- まだ普通に生活できているのだから、大したことではないのかもしれない。
こうした受け止め方は珍しくありません。
一般的な不安は多くの人が日常生活に影響しない程度に調整できる一方、全般性不安障害では不安や心配のコントロールが難しくなり、生活に支障が出るほどの状態になると整理されています。
つまり、問題は『心配すること』より、『不安に生活の主導権を渡してしまっていること』にあります。心配が多いのではなく、頭が休まらない
全般性不安障害では、自分や家族に何か悪いことが起きるのではないかと絶えず気になり、些細なことにも過敏に反応してしまい、物事に集中しにくくなると説明されています。
特定のひとつの場面だけではなく、広い範囲の出来事に不安が持続することも特徴です。
- 休んでいるのに休んだ気がしない。
- 休日なのに、頭の中だけがずっと勤務中。
そんな疲れ方に近いのかもしれません。
メールを送ったあと、文面が急に気になる。
返事が少し遅いだけで、何か悪く受け取られたのではないかと不安になる。
別の作業をしていても、そのことが頭の端に残り続ける。
夜になっても、もう終わったはずの出来事として処理できない。
こういう終わらなさが、しんどさの正体になっていきます。
心配しているというより、頭と体がずっと緊張している

表に出やすい変化
全般性不安障害では、落ち着かなさ、集中しにくさ、イライラ、疲れやすさ、筋肉の緊張、不眠などがみられるとされています。
身体症状としては、頭痛、頭が重い感じ、めまい、動悸、息苦しさ、倦怠感、頻尿、下痢、不眠なども挙げられています。
| 変化の出やすい場面 | みられやすい状態 |
| 気持ち | 落ち着かない、そわそわする、イライラしやすい、悲観的になる。 |
| 頭の働き | 集中しにくい、注意が散りやすい、心配が止まりにくい。 |
| 体 | 動悸、息苦しさ、頭痛、めまい、疲れやすさ、胃腸の不調など。 |
| 睡眠 | 寝つきが悪い、途中で目が覚める、眠っても休んだ感じがしにくい。 |
このあたりまで重なると、ただ『考えすぎる人』として見るのは無理があります。
不安によって、生活の基礎体力そのものが削られている状態に近づいているからです。
体に出ると、さらに自分を疑いやすくなる
ここでさらに混乱しやすいのが、体の不調です。
強い不安や心配が自律神経に悪影響を及ぼし、身体症状につながることがあると説明されています。
しかも、頭痛や腹痛、動悸などの不調が続いているのに、検査では原因が見つからない場合もあるとされています。
すると人は、こう考えがちです。

「異常がないなら、気のせいなのかもしれない。 」

「自分が大げさなだけなのかもしれない。 」
でも、異常が見つからないことと、つらさが小さいことは同じではありません。
説明のつかないしんどさが続くこと自体が、かなり消耗することだからです。
生活は大きく壊れる前に、じわじわ削られる
全般性不安障害は、仕事や学業のパフォーマンス、人間関係、生活の質にまで影響を広げると説明されています。
会議の内容が頭に入りにくい。
相手の反応が必要以上に気になる。
何度も確認したり、不安になりそうなことを避けたりするうちに、生活の幅が少しずつ狭くなることもあります。
ここが見えにくいところです。
急に何もできなくなるとは限りません。
むしろ、何とかできてしまうからこそ、自分のしんどさを後回しにしやすい。
そのまま長く抱え込んでしまう人も少なくありません。
がんばれてしまう人ほど、相談が遅れやすい

不安や心配が6か月以上続いていること、自分でコントロールしにくいこと、落ち着かなさや疲れやすさ、不眠などを伴うこと、生活に支障が出ていることは、受診や診断を考えるうえで大切な目安として挙げられています。
頭痛やめまい、動悸などの体の不調が続くことも、相談を考えたいサインです。
ただ、ここで多くの人が止まります。
まだ仕事には行けている。
家事もまったくできないわけではない。
笑える日もある。
だから、こんなことで相談していいのだろうか、と迷ってしまうのです。
でも、つらさは、完全に動けなくなってからしか相談できないものではありません。
本当に苦しい人ほど、まだできることを数えて、『自分はそこまでではない』と判断しがちです。
むしろ、そうやって耐えながら生活している状態そのものが、すでに無理を重ねているサインなのだと思います。
- 不安が長く続いている。
- 自分で止めたいのに止めにくい。
- 眠れない、疲れやすい、落ち着かない。
- 仕事や家事、人間関係に影響している。
- 体の不調まで出てきている。
相談することは、大げさな行動ではありません。
弱さを証明することでもありません。
今の状態を、性格の一言で片づけないための行動です。
性格を直す話ではなく、対処を知る話です

全般性不安障害の原因はひとつではなく、神経質な性格傾向、遺伝的要因、環境要因、生まれながらの気質、ストレス状態、自律神経の乱れなど、複数の要素が関わる可能性があると説明されています。
そのため、『気にしすぎる性格だから全部自分のせい』と単純に片づけることはできません。
主な対処法と治療法
- 薬物療法、抗不安薬やSSRIなどが用いられます。
- 精神療法、認知行動療法が代表的です。
- 休養、ストレス源から距離を置き、十分な休息を確保することも大切です。
- 生活調整、適度な運動、規則正しい生活、呼吸法なども勧められています。
ここで覚えておきたいのは、治療とは無理やり前向きになることではない、ということです。
不安をゼロにするというより、不安に飲み込まれにくい形へ少しずつ整えていく。
そのための方法が、きちんと用意されています。
最初に変えるべきなのは、自分への見方かもしれません

ずっと性格のせいだと思ってきた。
でも本当は、性格ではなく、ちゃんと名前のある不調かもしれない。
そう捉え直すだけでも、見える景色が少し変わることがあります。
『こんなことで』と思ってしまう日もあるはずです。
『まだ大丈夫な気がする』と引き返したくなる日もあるかもしれません。
それでも、つらさが続いているなら、そのつらさを自分で小さく扱わないでください。
いきなり前向きになれなくても構いません。
大きな決断もいりません。
まずは、自分のしんどさを、自分で雑に扱わないこと。
そこからで十分です。
つらさが続く場合は、精神科や心療内科などの専門機関への相談も検討してください。

